デカローグ4/ある過去に関する物語 

「デカローグ4/ある過去に関する物語」を観た。
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ワルシャワ大学で倫理学を教えるゾフィア(マリア・コシャルスカ)を、アメリカの倫理学者で彼女の著書を英訳したエリザベタ(テレサ・マシェスカ)が訪ねてきた。講義を是非見たいというエリザベタをゾフィアは喜んで歓迎するが、彼女はゾフィアの過去に関わりのある人物だった・・・。

十戒をモチーフにした全10話連作の第8話。近作でモチーフとなったのは「隣人について偽証してはならない」。



これは何とも哲学的な作品ですね。デカローグシリーズ全てが哲学的でもあるのですが、その中でもこの作品は突出しているように思えます。鑑賞中はなんだか哲学書を読んでいるかのような気分になりますね。まぁ読んだことないんですけど。

大学で倫理学を教える教授であるゾフィアのもとへ一人の女性が尋ねてきます。この講義の中で「第2話:ある選択に関する物語」をモデルとしたディスカッションが行われます(※注:このデカローグシリーズは、全ての物語があるワルシャワ郊外の団地住人達のエピソードで構成されている。その為、各エピソードがすこしづつ交わっていたりするんです)。それはある夫婦のエピソードで、自己都合の為に子供を生むか堕ろすか、というモデル。ここでゾフィアは「大切なのは子供の命」と言うんですね。

そこに授業を聴講していた女性が食いつきます。「大切なのは子供の命?」と。彼女は40年前の1943年、ナチスのユダヤ人狩りから逃れる為、とある夫婦へカトリックの偽の洗礼の立会い人になってほしいと頼みに行きますが、夫婦はそれを拒否。外出禁止令の発令されている街へと追い出されるという仕打ちを受けた過去があるんです。幸いにして身を隠すことが出来、その時は難を逃れた彼女でしたが、その時の拒否=死の宣告だったんですね。

そして彼女を拒否した夫婦は他でもない、ゾフィアだったのです。そんなゾフィアの口から発せられる「大切なのは子供の命」。倫理とはなんぞや?というわけです。しかしゾフィアもその時のことを後悔しながら40年間生き続けてきていたんですね。そんな彼女の後悔と葛藤が物語の前半では描かれています(前半といってもたったの20分程!この短時間でこれだけのことを描ききる監督の手腕は凄すぎ)。

後半は当時の真実と「赦し」を得たゾフィアの罪の意識からの脱却が描かれるのですが、この作品、最後までみても明確なテーマというものが見えてこない。倫理と行動の矛盾、人間の欺瞞性、そして赦しによる罪悪感からの解放、それら全てのことが包括されている作品ではないでしょうか。たった60分の作品だが、劇中に登場する全ての事象に意味があるように見えてくるし、実際あるのでしょうが、とにかく食い入るように魅入ってしまった60分でした。この作品を観て何かを得る、ということは難しい作品かもしれませんが、見えない答えに向かってあれこれと思索を巡らせるようなことが好きなタイプの人には必見の作品かもしれません。哲学書のような1本です。

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「デカローグ4/ある過去に関する物語」
★★★☆☆☆

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